富山県で働いている、あるいはいつかは働きたい方に向けて、最前線で活躍するリーダーや注目企業、注目の人を紹介し、富山での新しい働き方を提案する『富山人材新聞』。
今回登場するのは、介護福祉士の澤井寿斗(さわいゆきと)さんです。
就職を機に富山県へ移住した、Iターン経験者のゆきとさん。
「富山型デイサービス」発祥の施設「このゆびとーまれ」での勤務を経て、現在は富山市平岡にある放課後等デイサービス「ミックスベリー」にて、施設管理者・児童発達管理責任者としてお仕事をされています。
話によると、ゆきとさんは「福祉」を学ぶために富山県に移住したのだとか…!
そこで本日は、ゆきとさんが感じた「富山県の福祉の魅力」について深掘りしていきます。
富山に住んでいる、働いている方はもちろんのこと、今後富山で働く、住む、仕事をする、起業することなどに興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
〈聞き手=石原たいぞー(富山人材新聞編集長)〉
澤井寿斗 1990年生まれ、奈良県出身。保育系の短期大学を卒業後、富山型デイサービス発祥の施設である「このゆびとーまれ」での就職を機に富山県へ移住。現在は、富山県平岡市にある放課後等デイサービス「ミックスベリー」にて、管理者・児童発達管理責任者として勤務中。 |
0歳から101歳までが共存する「富山型デイサービス」
ゆきとさんは、就職を機に富山県に移住したとのことですが、そもそも「福祉」の道に進もうと思ったきっかけは何だったんですか?
実は僕、もともと福祉に進むつもりじゃなかったんですよね(笑)。
当時は保育士を目指していたので、保育系の短大に進学したんです。
ただ、その短大には、保育士免許を取得すると介護福祉士の勉強ができるカリキュラムがあって。
せっかくなら、介護福祉士の資格も取りたいと思ったのがきっかけでした。
どうして介護福祉士の資格も取ろうと思ったんですか?
保育と介護って「人生の始まりと終わり」だと思うんですよね。
なので、両方の世界を知っておくことは大切だと思って、福祉の世界にも飛び込むことにしたんです。
それで、介護の研修やボランティアを始めたんですけど…気付いたらどんどん関心が強くなってしまって(笑)。福祉の道に進むことを決めました。
なるほど。でも、どうして「富山県」だったんですか?
富山県で働きたいと思ったのは「富山型デイサービス」を知ったからですね。
富山型デイサービスは、年齢や障がいの有無関係なく、誰でもいつでも家族のような時間を過ごせる場所です。
普通「デイサービス」と聞くと、高齢者の方が通うイメージがあるじゃないですか。
でも、富山型デイサービスは、赤ちゃんからお年寄りまでいて、障がい者も健常者もいます。
僕が知っている限りでは、0歳から101歳までの人が通っていましたね。
0歳から101歳!?
そう。だから本当にいろんな声がするんですよ。
赤ちゃんが泣く声、おばあちゃんが笑う声、小学生が遊んでいる声とか。
もちろん富山型デイサービスでは当たり前のことなんですけど、普段の暮らしでそんな光景、なかなかないじゃないですか。
たしかに…。
それに、僕は保育と介護のどちらにも関心があったので、いろんな人がいる環境で働きたいなぁと思っていました。
「おじいちゃんおばあちゃん、子どもたちがみんなで過ごせる場所はないかな?」と調べたときに見つけたのが「富山型デイサービス」だったんです。
実は、富山型デイサービスは、僕が就職する前から全国にたくさんありました。
でも、「せっかくなら、このサービスをつくった人たちのもとで働きたい」と思い、富山型デイサービスの発祥施設「このゆびとーまれ」で6年間働きました。
なるほど。富山型デイサービスには赤ちゃんからお年寄りまでいるとのことですが、担当などはあるんですか?
担当という担当はないですね(笑)。
富山型デイサービス自体が「年齢や障害を問わず、分け隔てなく過ごす」ことを大切にしている場所なので。それに、人と関わることにそもそもマニュアルはないじゃないですか。
僕は、「介護者」と「利用者」という分け方にも違和感があります。
困っている人がいたら助ける…という感じで、「仕事をしにいく」というより「過ごしにいく」という感覚が強かったです。
「死すらも日常」富山型デイサービスで学んだこと
これまで富山型デイサービスで働くなかで、衝撃的だったエピソードはありますか?
「このゆびとーまれ」では、ターミナルケア(終末期医療)もやっていたので、実際に人が亡くなる瞬間に立ち会うことがありました。
え!? デイサービスで、ですか?
富山型デイサービスは「誰も排除しない」を理念に掲げているので、余命が残りわずかの方でも、家庭の事情やご本人の希望があれば通うことができるんです。
特に、「このゆびとーまれ」の創業者は看護師の方で、ご自身の経験上、「最期かもしれない…」というのがわかる方でした。
それで僕も、最期の瞬間に立ち会い、職員みんなで亡くなった方をお風呂に入れたり、葬儀の手配を手伝ったりしましたね。
これだけでも衝撃的なんですけど、実は他にもあって…
それはいったい…?
家族以上に一緒にいた人が亡くなった。その事実を思うとやっぱり悲しいし、どうしても重たい空気になるじゃないですか。
でも、施設を見渡すと、おままごとをしている子どもがいるんですよ。しかも棺の近くで。いつも通り、テレビを見ながらのんびりご飯を食べているおばあちゃんもいます。
え…棺の近くで?
そうなんです。僕たちの感覚だと死を「特別」なもののように感じているけれど、実はそうではないというか…
ふだん僕たちは死を「特別」なもののように感じているけれど、本当は死すらも日常…というより、「当たり前」なんですよね。
死は決して特別なことじゃない。生活の一部なんだって強く感じた瞬間でした。
その空間を想像すると…生と死がごちゃ混ぜですね。
そうなんですよ。目の前で人が亡くなったと思ったら、そのすぐ横では平凡な日常が続いている。「死は悲しいけど、当たり前のこと」だと気付かされた出来事でした。
なるほど…。今のお話を聞くと正直「大変なお仕事だな」と感じるのですが、富山デイサービスの面白いところはありますか?
もちろん。というか、面白いことだらけですよ!
一番はやっぱり、いろんな人がいたことですかね。利用していた方はもちろん、働いていた方も個性豊かな人ばかりだったので。
普通のデイサービスは、施設の近くに住んでいる方が働くケースが多いと思うのですが、「このゆびとーまれ」は、富山型デイサービスの理念に共感した人が県外からも集まる場所でした。
実習をしてそのまま就職する人もいたし、僕みたいに富山型デイサービスを学ぶために来ていた人もいました。いろんな人がいるからこそ生まれる、あったかい空気感がありましたよ。
「もっと気軽に遊びにきてほしい」実際の施設の様子
富山型デイサービスでの経験を経て、今はどんなことをされているんですか?
今は、富山市平岡にある「放課後等デイサービス」で管理者・児童発達支援管理責任者をしています。
「放課後等デイサービス」?
放課後等デイサービスは、障害のある就学児向けの学童保育のようなサービスなんです。
小学生から高校生(6歳から18歳)までの、障害者手帳などを所持している就学児童が来ます。
学校の後に来る子もいれば、学校に行けない子が日中の居場所として使うこともあります。
そんなデイサービスもあるんですね…! 実際にどんなことをして過ごすんですか?
僕が働いている「ミックスベリー」は、平屋の建物で、遊ぶ場所や、みんなで一緒に勉強できる場所があります。
学校が終わり、だいたい16時くらいにみんなが来るんですけど、まず宿題を一緒にします。
「やることやったら遊んでええから〜」が僕の方針です(笑)。
なんだか楽しそうですね!実際に行ってみたいです!
ぜひ! 僕が働いている施設は本当におもしろい環境なので、いつでも遊びに来てください。
子どもの人数は10〜15人くらいなんですけど、本当に個性豊かな子たちです。いろんな人が遊びに来てくれたら、きっといい刺激になりますね。
あの…福祉の資格などを持っていなくても、遊びに行っていいんですか?
もちろん!遊びに来るのに資格なんて要りませんよ(笑)。実は施設の近くに大学があるんですけど、大学生もときどき遊びに来てくれています。
もちろん、いろんな特性の子どもがいるので、知らない人が来るとびっくりしてしまう子もいます。でも、新しい学びって、そういう刺激から生まれるじゃないですか。
本当は子どもたちにそういった「刺激の場」を提供したいんですけど、僕はどうしても「安心をつくる立場」なので、皆さんが遊びに来てくれるのを楽しみにしています!
ありがとうございます! 富山県を訪れたときは、ゆきとさんに連絡しますね!
放課後等デイサービス「ミックスベリー」で、ボランティア&アルバイト募集中!
ゆきとさんが勤めている放課後等デイサービス「ミックスベリー」では、ボランティアやアルバイトスタッフを随時募集しているとのこと。
富山の福祉に興味のある方や、人と関わることが好きな方は訪れてみてください!
ミックスベリーさんのお問い合わせ先 住所:富山市平岡180 電話番号:076-471-6131
取材=石原 たいぞー(富山人材新聞編集長)(@taizojp)
文章=まあや(@maaya_minimal)
編集=いしかわ ゆき(@milkprincess17)
撮影=志賀美優(@shiiiga_10969)
デザイン=ゆーと(@yuto_higohashi)