皆さんは「白エビ」をご存じでしょうか?
世界中で富山湾でのみ漁獲されている、白くて半透明の小さなエビ。キラキラと宝石のように光り輝く姿から「富山湾の宝石」と称されています。
実は日本酒との相性バッチリで、お刺身にしても、かき揚げにしても、最高においしいんですよ…!
そんな富山県民にはお馴染みの名産品ですが、まだまだ県外の人には知られていないというのが事実。
そんななか、富山で白エビの魅力を広めようと奮闘している新湊の「富山湾しろえび倶楽部」の情報をキャッチしました。
そこで今回は、富山県滑川市出身・“白えびボディ”の愛称で活動中のグラドル・万理華が「富山湾しろえび倶楽部」へ取材を決行。
白エビの魅力はもちろん、白エビ漁業の実態に迫りました!
〈聞き手=万理華〉
(左)縄井さん:白エビ漁師歴16年 (右)野口さん:白エビ漁師歴15年 |
富山でしか獲れない希少な「白エビ」。その魅力は?
富山県民としてはお馴染みの白エビ。私も大好きなのですが、改めてその魅力について教えてください!
正直なところ、エビのなかで1番甘いのは白エビだと思うんですよね。
小さいけれどギュッと旨味が濃縮されていて、味が濃くて甘みがある。伊勢海老なんて薄い薄い!
それに、水揚げされたばかりの白エビはふわふわとした食感ですごく食べやすいんです。
1回食べてもらいさえすれば、確実に「おいしい!」と言ってもらえるはずなのですが、いかんせん希少でして…
たしかに、白エビってちょっと高級なイメージがあります。どうしてなんですか?
やっぱり、富山でしか漁獲されていないのが大きいですね。
そのなかでも、この新湊漁港は白エビが獲れる有数の漁港のうちのひとつ。すごく恵まれていると思います。
白エビは水深100〜400mの深い湾に生息しているのですが、これは富山湾の得意な地形なんです。それでも年間500トン程度ですが…。
全体的な供給量が少ないので価格が高騰してしまうんですよね。
獲れる量が少ないんですね。
あと、白エビは加工に手間暇がかかるんですよ。
たくさん獲れたとしても、いざ剥いてみたら重さに対して食べられる身が35%しか残らないのも希少価値が高い理由だと思います。
まず、水揚げしてからすぐに冷凍して、その後に半解凍してから剥くことで、身離れを良くしています。
実は、白エビは1匹ずつ手剥きしているんです。
手剥き!? なぜ!?
一時期は機械で剥いていたこともあるんですが、そうすると潰しちゃったり、皮がうまく剥けなかったりと、歩留まりが低くなってしまって。
手剥きだと、頭から尻尾まで無駄なく剥けるうえ、独特な力加減が食感を残してくれるので、とても大切な工程なんです。
希少性が高いと言われるとより食べたくなりますね…。オススメの食べ方はありますか?
お刺身で食べられるならぜひ食べていただきたい!
あとは唐揚げやかき揚げにするとハイボールが何杯でもイケちゃう!
基本的に真冬を除いて1年を通じて獲れるのですが、春先のほうが殻がやわらかく、秋口は少し硬いけど、サイズが大きいので、季節によってさまざまな白エビが楽しめますよ。
「もう白エビには飽きたよ」と言われるくらいに認知度を
おふたりが所属する「富山湾しろえび倶楽部」についてもお聞きしたいのですが、これは一体…?
以前、北陸新幹線開通により、白エビの値段が2〜3倍まで高騰したのちに1/3まで下落した時期があったんですよ。
それを受けて、将来的に白エビ漁を続けることに不安を感じ、白エビの魅力を知ってもらうためのPR活動ができないかと考え始めたのが設立のきっかけでした。
知り合いに紹介してもらったコンサルタントの方と一緒に船に乗ったとき、海から見える立山連峰とそこから覗く朝日のコントラスト、そして水揚げされたばかりの透き通った白エビがとても綺麗だと言われて。
それを観てもらうために観光ツアーを組み、それを軸にPRを展開していくことになったんです。
観光船は早朝に出発するため、さまざまな人が新湊の近くに泊まることになり、それが地域活性化にも繋がっていきました。
それを起点に、地元の企業や一般の方、仲買さんなど、白エビに関わる人とのネットワークを作ってPRをするようになっていったんです。
なるほど。普段は具体的にどのような活動をされているんですか?
倶楽部設立のきっかけにもなった、約2時間の観光船ツアーの実施が活動の中心です。
新湊の白エビ漁船は1日交代で操業しているので、漁を休業している船を活用して、漁船にお客さんと一緒に乗りこみ、白えび漁獲の様子を間近でご覧いただいております。
朝4時半集合、とかなり早いのですが、すごく好評なんです。
あとは、アンテナショップやイベントで出店したり、白エビの唐揚げを無料試食配布をしたり、道の駅とコラボメニューを開発したり。
白エビを多くの人に食べていただく機会を設ける活動のほか、最近では大学からお声がけいただいて授業を開催することもあります。
仕事がいつもお昼ごろには終わるので、午後はほとんど白えび倶楽部の活動に当てています。
多くの反響があるんですね! 「富山湾しろえび倶楽部」を設立して変わったことはありますか?
県内外問わずに取材依頼が殺到するようになり、「みんな、本当に白エビのことを知らないんだ!」ということに改めて気付きましたね。
今はそもそも素材として知られていないから、取材が来るというフェーズなので、いつか「もう白エビには飽きたよ」と言われるくらいに認知度を上げていきたいです。
売上をみんなでシェアして「競争」から「共有」の漁業へ
ちなみに…ちょっとお尋ねしたいのですが、やはり希少と言われる白エビの漁業は儲かるんですかね…
退職金がないので、長い目で見たらサラリーマンと同じくらいだとは思いますが…(笑)。
実は、新湊の白エビ漁に関しては、売上をみんなでシェアしているんですよ。
えっ! どういうことですか?
白えび漁の期間は、2班に分かれて1日おきに操業するのですが、全体の水揚げ量を調整しながら、水揚げ金額を各船に均等に分配する「プール制」を取り入れているんです。
これによって、漁業者同士の競争を抑え、白エビ資源を守りつづけることを優先しています。
なるほど。資源を守るためにシェアをしていると。
あとは、プール制の導入で「技術のシェア」も実現しています。
昔は漁師は親から継ぐ人や地元の人の割合が多かったけれど、今は地元のほうが少なくて、漁師になるために、関東からこちらに移住する人もいます。
うちの乗組員も20代2人、40代2人、70代2人のような構成で、若者も増えてきているんです。
ベテランの漁業者が若手へ熟練の技術を伝えていくことで、「競争」ではなく「共有」の波を作っていく。
白エビ漁のクオリティを維持し、未来へと繋いでいくことが、白えび倶楽部の大切な使命だと感じています。
外部に白エビを広める活動だけでなく、白エビを守るための仕組み作りも行っているんですね…! 本日は貴重なお話、ありがとうございました!
今や交通網と運搬技術の発達により、全国区で味わえるようになった白エビ。その背景には、白エビを守るためのさまざまな工夫があったんですね…!
野口さんいわく、白エビは「一度食べたら絶対に好きになる」とのこと。まだ白エビを味わったことがないという方、ぜひ富山に来たら白エビを。
わたしも白エビを広める活動にちょっとでも貢献するべく、グラビアのお仕事、頑張ります!
取材=万理華(@MaR_iKa9)/石原 たいぞー(富山人材新聞編集長)(@taizojp)
文章・編集=いしかわ ゆき(@milkprincess17)
撮影=吉田 一之 (@coyu3photo)