富山県で働いている、あるいはいつかは働きたい方に向けて、最前線で活躍するリーダーや注目企業、注目の人を紹介し、富山での新しい働き方を提案する『富山人材新聞』。
今回登場するのは富山県内最大級の地方メディア『富山の遊び場!』で代表を務める金子奈央さん。
富山に移住してからの生活や、知られざるメディア秘話、メディアグロースの秘訣についてお話を聞きました!
〈聞き手=石原たいぞー(富山人材新聞編集長)、高尾 有沙〉
金子 奈央(『富山の遊び場!』代表) 静岡市出身。 2011年に富山県氷見市に移住し、現在三世帯同居で3人の息子の母として日々奮闘中。 2013年に『富山の遊び場!』を立ち上げ、代表を務める。 SNSやYouTubeなど、さまざまなメディアで富山県内の情報を発信している。 |
本日はよろしくお願いします。富山といえば金子さん、ということでお声がけさせていただきました!
そんな…ありがとうございます。いろいろと出させていただいており、道端などで声をかけられる機会も増えましたね(笑)。
富山の情報が何もない。憂鬱な日々のなかで見つけたのが…?
現在は『富山の遊び場!』代表として日々メディアで大活躍中の金子さんですが、『富山の遊び場!』を始めたきっかけは何でしたか?
実は私、『富山の遊び場!』を始めた第一人者ではないんですよ(笑)。
そうなんですか!?
私は以前は静岡に住んでいたのですが、2011年に氷見出身の夫についていき、富山に移住したんです。そのときは本当に知識がなくて、石川と富山の違いもわからないくらいでした(笑)。
知らない土地だからこそ、もう島流しみたいな気持ちで…。
それは心細いですね…
当時の富山には、なかなかレジャーとか楽しい場所の情報がなかったんです。ホットペッパーや、食べログなどのグルメ情報も少なくて、まわりに聞いても「なんもないちゃ」と言われてしまって(笑)。
移住最初の数年は、自身の三世帯同居の生活や、富山の土地に慣れないなかで、憂鬱な日々を送っていました。
そんななか、見つけたのがこの『富山の遊び場!』だったんです。
おお!
話を聞いてみると、実はこのサイト、私と同じように大阪から富山に就職してきたサクラくんが「富山、なんもねえな」と思って作っていたそうなんです。
ちょうどライター募集も出ていたので、嬉しくなって、持ち前の行動力でサクラくんに速攻連絡しました。それが自分の転機でしたね。
ということは、金子さんにはもともとライター経験が…?
全然です(笑)。静岡では介護福祉士として働いていたので、デイサービスで働いていました。
でも、もともと学生時代からブログやmixiには馴染みがあって、アマチュアとして個人的にブログを書いてたので、「とりあえず書いてみよう!」と勢いで応募しました。
そこまでする原動力は何だったんでしょうか?
やっぱり、「どうせ住むなら、富山を好きになりたい」と思ったんです。少しでも役に立つ面白い記事を書きたくて、子どもと行った公園や食べたものなどをどんどん記事にしていきました。
『富山の遊び場!』が富山の最大級のメディアになるまで
今や『富山の遊び場!』は富山最大級のメディアとなりましたが、どのように大きくされていったんですか?
サクラくんは理論派で数字を伸ばすのが得意。一方、私は感覚派で、「自分が読者だったらどんな記事が読みたいか?」を思い描きながら書いていきました。
続けていくうちに、アクセス数が増えてきて。そうすると、リアクションやコメントをもらえるようになってきて、次第に「読者のため」という目線が生まれました。
おふたりで少しずつ、育てていかれたんですね。
そんななかでも、やっぱりコロナのときは大きく変革するタイミングだったと思います。ピークのころにはコロナの感染者情報を毎日出すようにしていました。
当時、テレビでも速報が出ていたのですが、それをWebにまとめたほうが、テレビを見れない人の役にも立つかなと。もともと『遊び場』の記事を中心に掲載していたので、ニュースメディアのようなことをするのは結構大きな意思決定でした。
読者の方からの反響はいかがでしたか?
それまでとは別の読者層が読んでくださるようになりましたね。メディアが月間100万PV、25万UUに至るうえで、とても大きかったと思います。
とはいえ、私たちはあまりかっこいいコンセプトを打ち出してはいなくて。「週末、どこにお出かけしよう?」と思ったときに、友だちに聞くような身近さを感じてもらえるようなメディアを目指して、コンテンツを考えています。
メディアもですが、『富山の遊び場!』はYouTube動画もかなり有名ですよね。
今はYouTubeで勝負をかけています。
きっかけとしては、2017年の私の独立、そして2019年のサクラくんの独立がありました。
それまでは介護のパートの傍らでやっていたのですが、次第に依頼が増えてきて。
まわりにWebメディア1本で独立している人はいませんでしたし、大きな決断でしたが、そのときは「やるしかない」という気持ちでした。
子育ての傍ら、かなり大変だったのではないでしょうか。
そのころはサクラくんもまだ会社員をやっていたので、自分が何とかしないと!と思い、とにかくいろいろやっていましたね。
当時はまだなかなかいなかった顔出しライターになったり、電話、メール、広告、営業なんかもやってみました。外部ライターとして、採用や起業に関連する記事を書いたりも。営業は全然うまくいかなかったのでやめましたが(笑)。
2019年の4月に、私が3人目を出産したタイミングでサクラくんも独立して。そのときに、さまざまなメディアが普及するなかでの差別化の方法を考えて、YouTubeもやろうということになりました。
なるほど、変わっていく社会に対応していったわけですね。
はい、ちょっと前までは毎日投稿していて。やっていくと色々と面白いことが見えてきたんです。
SNSやブログは県内の方が読まれていることが多いのですが、YouTubeはエンタメ性や遊び心を大事にしているからか、県外の方にも観てもらえています。自分たちのなかでも、棲み分けが見えてきましたね。
ひとりではできなかった。『チーム・富山の遊び場』
現在はどのような体制でメディアを運営しているんですか?
動画編集はサクラくん。クライアントとのやり取りやディレクション、ライター、SNS、カメラマン、動画の企画、講演会などは私、という感じで、あとは2人で一緒に台本を書いたり企画をしたりしていますね。
裏方で中林くん(通称:ばやちゃん)という動画クリエイターの方にも入ってもらっています。
それ以外にもメンバーがいるんですか?
はい。あとはローカルタレントのさだありささん、「UNA-JYO(ウナジョ)」こと津田奈由子さん、富山県のご当地キャラであるばいにゃこさんが、出演を通じて盛り上げてくれます。
集まるとにぎやかそうですね…! そんななかでも金子さんは、肩書きが行方不明になりそうなくらい、多岐にわたる活動をされていますよね!
そうなんです(笑)。インスタグラマーとかYouTuberとか言われますが、私は『富山の遊び場!』の代表という肩書きが一番しっくり来ます。
ひとりでやるのではなく、チームでやっているのは何故なんでしょう?
実は、私が一番尊敬しているのはサクラくんなんです。とにかく勉強熱心で頼れるブレイン。だからこそ、自分がハートとか感性の部分を担っていかなきゃ、と思えるし、このチームだからこそ、共感してくださるメンバーが集まったんだと思います。
みんな根っこは同じで、「富山を盛り上げたい」という気持ちですね。あとは「楽しむ力」も共通していると思います。でもこれらも、「なにもないちゃー」と言われてしまいがちな富山で諦めずに楽しもうとしているからこそだと思います。
今後取り組んでいきたいことは「育成」と「後押し」
今後挑戦したいことはありますか?
とにかくチームのメンバーのやりたいことを後押しすることですね。
たとえば、地方創生につなげたいご当地アイドル「UNA-JYO(ウナジョ)」こと津田奈由子さんのアイデアや頑張りによって、存続のかかったスキー場の向こう5年間の継続が決定したんですが、そのときもTVでも新聞でも取り上げてもらえるように動きました。
すごい…!
それは、メンバーである、さだありささんが地上波で帯番組を持ちたいという夢があることも関係しています。
彼女たちの仕事の幅を増やすためにも、どのような場所にも顔を出していき、『富山の遊び場!』の認知度を広げることが必要だと思っています。
自分自身の将来については何か考えていることがあるんですか?
私自身としては「『富山の遊び場!』の金子です」と言いつづけたいなと思っています。
もちろん、メディアは生き物なので、いつまで出演しつづけるかは分かりませんが、WebメディアもYouTubeもやめたとしても、何かしらで発信の場は残したいですね。
あとはとにかく『富山の遊び場!』を続けていくこと。どういう媒体になるかもわからないし、ネタも変わるかもしれないし、関わり方も裏方に変わるかもしれないけど。
もうここまで来ると、これだけ自分たちで育ててきた『富山の遊び場!』を、もう1人の自分くらいに思っていて。
まさに「ライフワーク」ですね。
はい。「楽しんでいる大人を増やしたい」という思想が根底にあるのですが、そこから派生して、子どもが「遊び場」を楽しむベースの部分を伝えていきたいな、と思っていて。出張授業を持ったりなど、教育関連にも着手したいと思っています。
次世代の子どもたちに、どこにいても大人が楽しさを伝えてあげることとか、インターネットのアレコレを教えたりすることで、「出る杭は打たれる」風土をなくしていくことが、まさに自分のできることなんじゃないかと思っています。
お子様やご家庭を大切にされる、金子さんらしいなと思いました。
一番大切にしたいのは「家族」と「富山の遊び場!」。だからこそ、私自身の取り組みが日々実験だと思っています。
周りからはちょっと浮いているかもしれないけど(笑)、地域活動への貢献、PTA、自治会、野球チームなど、できることは何でもして、なんとかやっていけています。「変わってるのは事実だけど、一生懸命やってくれているよね」と見られるように頑張っています。
ありがとうございました!
取材を通して、いつも一生懸命なのに自然体な金子さんのイキイキした語りが印象的でした。あっけらかんとして努力家な金子さんのお人柄が、あらゆる人の人生に彩りを加えていることにとても納得感がありました。
頭の回転が早く、それでいてキラキラした笑顔で、ときに真剣な表情ものぞかせながら語ってくださったひとつひとつの言葉を、『富山の遊び場!』読者の方に届けられたら…と思い、取材させていただきました。
ありがとうございました!
『富山の遊び場!』で富山の面白さを体感しよう
金子さんが代表を務める『富山の遊び場!』、ウェブサイトもYoutubeも更新中とのことです。是非読んで・観てみてください!
富山の遊び場!
YouTube『富山の遊び場!TV』
取材=石原 たいぞー(富山人材新聞編集長)(@taizojp)
撮影=志賀美優(@shiiiga_10969)
取材・文章=高尾 有沙(@arisa_takao)
編集=いしかわ ゆき(@milkprincess17)
デザイン=井上初音