起業家に聞く!

製薬会社による“サウナメディテーションホテル”が富山に誕生。香りと音で「人間性の回復」を

起業家に聞く!

製薬会社としては前衛的な働き方改革を推進したことで、幅広いビジネスを展開することになった前田薬品工業。

前編では、「組織づくり」と「採用」についてお話を聞きました。後編となる本記事では、立山町の原風景とハーブに囲まれたヴィレッジ「Healthian-wood(ヘルジアン・ウッド)」や、そのなかにある2022年夏にオープン予定のサウナホテル(!)を中心に展開する新たな事業について、深堀りしています。

前田 大介(前田薬品工業株式会社 代表取締役社長)
同志社大商卒。会計事務所勤務を経て、2008年、29歳で前田薬品工業株式会社に入社。2013年には専務に、2014年に代表取締役社長に就任。地域に調和しつつ、革新的であり、人々を笑顔にするモノコト空間を持つAmazingカンパニーを創り上げることを将来の夢に持つ。

 サウナ×ハーブの香り×音がもたらす没入体験

たいぞー
たいぞー

前田薬品工業では幅広い事業をやられているそうですね。具体的にはどのような事業をされているんですか?

前田さん
前田さん

前田薬品工業では、塗り薬の技術を生かしてスキンケア化粧品の開発を手掛けていたり、オリジナルアロマブランドの製品開発・販売も行っています。

最近では、「ビューティーアンドウェルネスビレッジ」と称して「Healthian-wood(ヘルジアン・ウッド)」という施設の運営をしています。雄大な自然のなか、和ハーブをはじめとするさまざまハーブを栽培するハーブガーデンや、精油を抽出するワークショップ、素材を活かした料理などを提供しています。そして、2022年3月にここに新しくオープンするのが「サウナ」。サウナがありながら泊まれる貸切型の「メディテーションサウナホテル」となります。

たいぞー
たいぞー

メディテーションサウナホテル! 一体どんなこだわりが…?

前田さん
前田さん

ヘルジアン・ウッドは直訳すると「ヘルシーを目指す人の森」となるのですが、ここのテーマはズバリ「人間性の回復」です。

たいぞー
たいぞー

人間性の回復…?

前田さん
前田さん

現在は長時間のマスクの着用や、人と会話をする機会の喪失で嗅覚や聴覚などの鋭敏な感覚が失われつつあります。


そこでヘルジアンウッドでは、サウナを楽しみながら、ハーブの香りと音を通じて、普段意識していない感覚を研ぎ澄まし、没入できる体験を提供しています。こんな状況だからこそ、センシティブな人間の感覚に迫っているんです。

たいぞー
たいぞー

なるほど。それを製薬会社がやることには大きな意味がありますね。

前田さん
前田さん

ドイツなどの欧米諸国では、医療の現場でもハーブが使われています。また、製薬思想はエビデンスも重要です。「この香りとこの音楽が本当に気持ち良いのか?」というのを、脳波を比較することで実効性を確かめるなど、実験をしていこうと考えています。

たいぞー
たいぞー

本当に良いものを創っていこうという姿勢がすごいです…!

前田さん
前田さん

また、もうひとつの目玉は何と言ってもロケーションです。井戸から引いた常時16℃の立山の雪解け水風呂に入ると、目の前は広大な立山連峰。「この地球で生きている、地球の一部である」ことを感じられます。この感覚は、都会ではなかなか味わえないのではないでしょうか。

これは前日から予約待機待ったなし…!
前田さん
前田さん

冬は床暖房も入っていて快適ですし、キッチンも付いていて、料理もあとは焼くだけの状態なので、心地よく過ごせると思います。すでに400名以上の方から「予約したい」との申し出があります

たいぞー
たいぞー

もうそんなに! 予約はいつから取れるんですか?

前田さん
前田さん

2022年4月1日から予約がとれるようになります。価格としては、7名宿泊の場合、1名15000円程度です。グランピングもあるので、団体の人は特に楽しめるのではないでしょうか。

化粧品事業から「村全体のウェルビーイングを考える」事業へ

洗練された雰囲気
たいぞー
たいぞー

そもそも、製薬会社がこのような事業に取り組むのはとても面白いですよね。前田さんはなぜこのビジネスを始められたんですか?

前田さん
前田さん

日本にある製薬会社は、売上の多くを税金で賄われているという事実があります。薬の処方は7〜8割が税金ですよね。言い方は悪いですが、病気になった人に税金を当てて、それを含めて利益をいただいているという見方もできます。一方、本来であれば病気になりたくないし、早く治したいはず。


僕は、病気の人がたくさんいると儲かるという事業ではなく、より健康な人を作る事業をやりたいと思ったんです。

前田さん
前田さん

はじめは、化粧品事業をやりたかったのですが、調べていくうちに、日本の製薬会社はアロマオイルの抽出を行っていないことに気付きました。日本では、精油は雑貨として扱われますが、実は日本以外の国では、精油が医薬品として承認を受け、薬局で処方されるケースがあるんです。

そこで、精油をきちんと抽出してスキンケアに落とし込むことで、雑貨の領域を超えていけるのではないかと思ったんです。

たいぞー
たいぞー

そこからレストランやサウナ、宿泊施設に変貌を…?

前田さん
前田さん

そうなんです(笑)。精油の抽出工房を作ろうと思っていたところ、レストラン、トリートメント施設、宿泊施設…と構想が広がっていきました。

前田さん
前田さん

また、構想段階で、土地に根ざす課題である過疎化などにも直面しました。村の人たちが、僕たちが行くと喜んでくれたのが印象的で。「学校もあいてるよ!」「1000坪のお屋敷も空いているよ!」「休耕地もあるよ!」と、どんどん広がっていったんです。


その結果、「村全体の健康を取り戻す」という大きなチャレンジをすることにしました。

たいぞー
たいぞー

まさに村全体を巻き込んだ一大プロジェクトですね。

前田さん
前田さん

そんなときに、ちょうど建築家・隈研吾さんとの出会いもあり、「シンボリックで集える場所」をコンセプトに設計を進めることになりました。


そのコンセプト通り、すでに20組以上の方が結婚式を挙げられたり、音楽イベントやマルシェなどを行ったりしています。

たいぞー
たいぞー

すでに20組以上が結婚式!さっそくすごいですね…

前田さん
前田さん

このプロジェクトを進めていくことで、22世紀・23世紀の過疎地域の課題解決、ひいては日本全体の社会課題解決に繋がるケースにもなると思っています。


とはいえ「村」というのは人間関係がすべて。ウェットな関係構築がないとうまくいかないので、外部の人ではなくいち村人として精神的な繋がりを持ち、丁寧に築いていきたいですね。

たいぞー
たいぞー

メディテーションの場に留まらず、人が集うワクワクする場にもなっていっているんですね。今後の展望などはありますか?

前田さん
前田さん

村作りはロマンチックで抽象的だと思われがちですが、僕はしっかりKPIを達成していきたい。

いま、この村は9世帯30人弱未満の小さな限界集落で、平均年齢は60歳近くになっています。僕は10年以内に、多拠点居住者を含む人口を10倍の300人に、平均年齢を15歳ほど若返らせたいと考えています。


僕が還暦になる20年後には、人口1,000人、平均年齢は30歳で学校もちゃんとあるような状態にしていきたい。どんどん新しいチャレンジをする人が出てくるような状況を作って、バトンタッチしたいという野望があります。

たいぞー
たいぞー

20年後に人口1000人。ちょっと少ないような気もするのですが…?

前田さん
前田さん

そこがポイントで、人の数は多すぎても、空間が壊れてしまうんです。「富山成長戦略会議」のメンバーであるヤフー株式会社 CSOの 安宅 和人からは「美しい疎空間」という言葉をいただきました。


毎日10,000人が押し寄せると雑多な空間になってしまう。でも、1,000人であれば、自然を壊さない、窮屈でもない、そして寂しくない人数なのではないかなと想定しています。

前田さん
前田さん

なかなか思い通りに行かないことが多いこともありますが、関わる人の心のウェルビーイング、そして村全体のウェルビーングを実現するために、できることから取り組んでいきたいですね。

たいぞー
たいぞー

ありがとうございました! ヘルジアン・ウッドが描く未来、とても楽しみにしております。

ヘルジアン・ウッドのサウナメディテーションホテルが2022年5月1日から予約スタート!

雄大な自然のなか、心ゆくまで「生」を感じる体験をしてみませんか?詳しくは公式サイトをチェックのうえ、ご予約ください。

​​取材=石原 たいぞー(富山人材新聞編集長)(@taizojp
文章=高尾 有沙(@arisa_takao
編集=いしかわ ゆき(@milkprincess17
デザイン=ゆーと(@yuto_higohashi
撮影=志賀美優

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