富山県で働いている、あるいはいつかは働きたい方に向けて、最前線で活躍するリーダーや注目企業を紹介し、富山での新しい働き方を提案する『富山人材新聞』。
今回は、富山県で初めて誕生した職住一体・職住融合の新しい生活スタイルを提供する「SCOP TOYAMA」に潜入。SCOP TOYAMAの指定管理者の一人で、「創業支援」「移住支援」「住む」「働く」の4つの融合拠点を目指す、plan-A TOYAMA代表・相澤 毅氏にお話を聞きました!
富山に住んでいる、働いている方はもちろんのこと、今後富山で働く、住む、仕事をする、起業するなどに興味がある方、ぜひ読んでみてください。
相澤 毅(plan-A TOYAMA 代表) 大手生活用品ブランドにて売上改善業務に従事。その後博物館の経営改善を手がけた後に、デベロッパーへ。「横浜市最大のエコタウン」開発をはじめ、不動産開発から海外事業スキーム構築や広報PR、販売戦略、事業企画、商品開発、リノベーションなど多分野にて活動し、2018年に独立。現在は不動産事業者へのコンサルや新規事業構築、場のプロデュース、電鉄会社や自治体とのまちづくり、NPO法人の理事など、多様な事業に取り組む。「SCOP TOYAMA」の運営のため、隔週で横浜と富山の2拠点生活中。 |
すでに大人気!「ワクワクする出会いがある」SCOP TOYAMA
今日は富山県が運営する富山県創業支援センター/創業・移住促進住宅である「SCOP TOYAMA」からお送りしています。よろしくおねがいします。
「SCOP TOYAMA」へようこそ!
まずは「SCOP TOYAMA」について教えてください。 どんな場所なんでしょうか?
「富山県創業支援センター/創業・移住促進住宅」と謳っていますが、具体的に言うと「創業支援×移住促進×住む×働く」という4つの要素を併せ持つ融合拠点です。
具体的には、創業支援センターには、創業相談会やワークショップが開催されるスペースのほかに、企業や個人事業主が入れるシェアオフィスやコワーキングスペース、小さくお店を出せるチャレンジショップがあります。そして、住宅は異なるコンセプトを持つ2棟からなり、両棟にシェアハウスとアパートメントがあります。
「職住」だけはなく、さまざまなことを実践しているんですね! すでに活用されている方もたくさんいるのでしょうか?
現在(2023年1月取材当時)は、オフィス、シェアオフィス、チャレンジショップ、すべてがほとんど埋まっている状況です。当初の想定稼働を大きく上回っており、注目度や活用度もぐっと高まっています。
シェアハウス&アパートメントは「東棟」と「西棟」があるんですね。どんな違いがあるんですか?
東棟は、「多様な人が共に暮らし、コミュニティを育むコレクティブハウス」。多世代と交流できる場です。スローライフの中で富山の文化や多世代交流をゆっくり楽しみたい方が住まれていますね。
西棟は、「クリエイティブで刺激飛び交う“チャレンジャー共創型住居”」。自由な働き方を楽しみたい人たちに特化した場です。起業を具体的に進める人が多く、20代を中心とした勢いのある方が多いです。
どちらの棟も、共通して「コミュニティに属すること」に関心がある印象ですね。
楽しそう! 実際に住まわれている方からは、どんなお声をいただいてるんですか?
「どんな人に出会えるかわからないワクワク感がある」と言っていただいています。
20代から50代まで、年齢層や経歴もさまざまです。もちろん、ここに入居してもらうことがゴールではないので、今後いろいろなことに巻き込まれていただきたいなと思っています(笑)。
富山県庁メンバーの“チャレンジング”な姿勢に衝撃!
そもそも、どのような背景から「SCOP TOYAMA」は生まれたんですか?
事の発端は、全国の高校生等が建築のアイデアやデザインを競う「建築甲子園2017」で、富山の学生が提案した、旧県職員住宅の活用を想定したリノベーションプランが優勝したことでした。
すごい!
職員住宅としての役目を果たした建物に、若者たちから新たな命が吹き込まれ、「起業家や移住者をはじめとした、様々な方が暮らし・活躍する舞台へ」と生まれ変わる。そんなアイデアに深く共感し、参画することに決めたんです。
最初は「創業支援」「移住支援」の2つが掲げられていたのですが、僕はこの話を聞いたときに、このプロジェクトは「住む」「働く」を含む4つの融合拠点にしたいと思って、とてもワクワクしていました。すごくチャレンジングだな! と。
あれ、でも相澤さんって横浜に住まわれているんじゃ…。
もともと、プロジェクトが開始したときには、建築設計の会社は決まっていたものの、運営のプロセスやスキームが不在の状態だったんですよ。
「拠点としての思想を吹き込んでいかないと!」と富山県庁の方に伝えつづけていたら、県内のいろいろな人と出会えるようになり、いつの間にか富山との二拠点生活になっていました(笑)。
それに、富山は素地としての居心地の良さが抜群に高い。海と山、川が近かったり、食と水が豊かだったり…それでいて首都圏とのアクセス性が高いのがすごいところですよね。
起業というと大変なこともありますが、自分自身がこの土地に滞在してみて、「働く」を含めた「暮らす場」としての富山が素晴らしいと思ったからこそ、この地に「挑戦の場」を作りたいと思ったのです。
そうだったんですね。実際にこのチャレンジングな試みは、富山県庁の方にどのように受け入れられていったんですか?
それが、いい意味で県庁職員っぽくないチャレンジングな人たちばかりだったんですよ。
一緒に働いてみて、バランスをとるのが上手な方からやんちゃな方、ものすごい速度でお仕事をする方まで、いろんな方がいて。しかも、普通に考えたら「ダメ!」と棄却されてしまうようなこともさせてくれる人たちだと感じました。
普通は行政事業というと、ガチガチなものを想像しませんか?
たしかに…
それが、このメンバーだったらこそ、イベント企画も、民間と積極的にコラボレーションするなど、ありえないことがありえないスピードで決まっていきました。
本来であれば対立しそうな、あらゆる関係者のあいだをうまく繋いでくれる、良いチームができていったんです。
富山の「文化」を変えるため、コミュニティの接点を増やす
実際に「SCOP TOYAMA」を創るうえで、どんなことにこだわりましたか?
創業支援に焦点を当て過ぎるのではなく、コミュニティの接点を増やすことに注力したことですね。
僕はもともと、首都圏でゴリゴリのスタートアップ支援をしていたのですが、「SCOP TOYAMA」では、同じようなやり方では通用しないと考えていました。
どうしてですか?
富山には「創業が少ない」「大学発ベンチャーの数が全国最下位」というデータがあります。製造業の基盤が安定していることで、就職率が極めて高いこともあり、そもそも起業という選択肢がない。だから、学生も起業しないし、親御さんも起業を応援しづらいんですね。
だからこそ、素地としての「文化」を変えない限り、派生するスタートアップの数が伸びないと感じていました。
また、「SCOP TOYAMA」では、東棟が多世代交流型住居、西棟が起業家が集まる共創型住居という構造になっており、真ん中に創業支援棟があるのですが、この創業支援棟があまりに熱量を帯びすぎると「住まう」ことに疲れる人が出てきて、双方の交流が減ってしまうのでは、という懸念がありました。
そこで、創業支援を全面に押し出すのではなく、まずはコミュニティの接点を増やして、富山の文化を変えていく方向に舵を切りました。
特に、親世代に活用してもらうことで、「起業」という単語を身近にするために、カフェや雑貨店などをオープンできる場所を作ったり、小さく出店できる「チャレンジショップ」という取り組みにも参加してもらったりしています。
まずは、今「SCOP TOYAMA」を利用されている方同士を繋げることを最優先にしていると。
そうですね。外部の人に対してイベントを打つことよりも、今利用されている方の居心地を良くするために、「そこでどんな時間を過ごして、何を求めているのか」を見つけることを徹底しています。
生活が絡んでいるので、スタッフには派手さよりも「無理をしないこと」「頑張りすぎないこと」を大切にするよう伝えています。スタッフには、利用者さんの仲間や家族として存在してほしいんです。
利用者さんと丁寧にコミュニケーションを取っているんですね。
感覚的には寮母さんみたいな感じのイメージですね。体調の機微に気付けるぐらい、細かいところを見てフォローすることが、現場ならではの役割だと思っています。
今は、現地スタッフが4名いるんですが、安心感がすごいので、僕がいなくても問題なく回っていますね。
今後は「応援してくれる人のネットワークづくり」を
ありがとうございます。最後に、「SCOP TOYAMA」の今後について教えてください!
ここまで「利用者さん」「現場の雰囲気」を大切にしているというお話をしてきましたが、今後はいよいよ「対外的な発信」が重要になってきます。
そのために、外部のいろいろな方たちと「協力会員」といった関係構築をしていくことが重要だと感じています。応援してくれる人たちのネットワークを形成していきたいな、と。
とにかく、“ライトな入口”を作りたいですね。
ライトな入口?
たとえば、「エラい人が登壇して話す」のではなく、「一緒に考えてみようよ!」というワークショップを開催したり、コワーキングスペースを1日500円で使えるようにしたり、5台ほどの木製のワゴンを月額1,000円/1台で使える「マート」という仕組みを作ったり。
ふらっと来れて、ふらっとチャレンジできる。「SCOP TOYAMA」はそんな場所にしたいんです。
それはハードルが下がりますね!
まさにそれが狙いです。
これまでの「起業」というと、初期投資や事業計画書などの書類の作成など、ハードルが高い、というイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。
でも、「事業計画書って何?」という方に対しても、門戸を広くしたいと考えているからこそ、「考えがまとまってない」段階の人たちの創業相談も、しっかり受け止めて寄り添える体制を整えています。
僕たちは、ゼロベースの人たちをゆるやかに応援したい。だから、一緒に暮らし、伴走し、応援し、されるなかで、ちょっとずつ兆しが出てくるような場を作っていけたらな、と思います。
今後「SCOP TOYAMA」からさまざまなチャレンジが生まれるのが楽しみです。 本日はありがとうございました!
創業応援プロジェクト「BizHike(ビズハイク)」が始まります!
この度SCOP TOYAMA発の創業応援プロジェクトとして「BizHike(ビズハイク)」がはじまりました。創業を志し実践する人たちが、その道を「ひとりにならず、みんなで歩む」ことができる環境を提供しています。ぜひ覗いてみてください!
富山で仕事をしたい、富山で仕事をする人を見つけたい方必見!
当メディアを運営する株式会社インテラスでは、「富山の人事部」を目指して、富山で働きたい方の転職をお手伝いしています。また、富山をはじめとした企業様を、「人の働くをより良くする」という観点でお手伝いしています。
「富山で働きたい!だけどどんな選択肢があるかわからない…」という方はこちらからご相談ください!(相談:無料)
富山でミッション・ビジョンの策定・人事制度の設計・新卒・中途採用支援・研修設計・実施などをご相談されたい方はこちらからどうぞ!(初回相談:無料)
取材・撮影=石原 たいぞー(富山人材新聞編集長)(@taizojp)
文章=高尾 有沙(@arisa_takao)
編集=いしかわ ゆき(@milkprincess17)
デザイン=井上初音